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新新新・学校保護者関係研究会 第11回半公開学習会「まずは部活動事故を防ぐこと、起きた場合に学校関係者は何をすべきか」

2018年 6月 24日

第11回「半公開学習会」のお知らせ

小野田正利
(大阪大学大学院教授・新新新学校保護者関係研究会代表)

新年度に入り、新しい職場にお勤めになられた方も多いかと思います。

私どもの研究会主催の「半公開学習会」に関心を持ち、ご参加いただきまして、ありがとうございます。私を研究代表として、4回続けて大きな科学研究費が昨年度から採択されましたので、もう一つの「新」を加えて「新新新・学校保護者関係研究会」として昨年度から活動を続けております。新しいテーマは「対応困難な保護者とのトラブル事例分析と紛争化の防止及び解決支援に関する学際的研究」(17H01021、2017年度~2020年度)です。昨年度は、研究会メンバー内部での「微妙な事案」の検討を重ねてきました関係上、関心をお持ちのみなさんに成果の公表をする機会がありませんでした。

なお私事で恐縮ですが、私はあと2年で大阪大学を定年退職(65歳)いたしますので、この期間が最後の研究活動になるかと思います。

今回、下記のように「半公開学習会」(顕名での事前申し込みをなされてのご参加)の11回目を開催いたしますので、ご関心のある方は、下記の申込み要領に基づいて、事前申込みをお願いします

*講義室収容定員の関係上、定員180名になり次第、締め切りますのでご注意を。


  • 日時:2018(平成30)年6月24日(日)午後2時30分~6時
  • 場所:大阪大学・人間科学部 51講義室(人間科学部・本館5階)
    (吹田市山田丘1-2、モノレール「阪大病院間」下車7分、または阪急・近鉄バス「阪大本部前」下車5分)
  • テーマ:「まずは部活動事故を防ぐこと、起きた場合に学校関係者は何をすべきか~2011年・名古屋市立向陽高校、倉田総嗣くん事故から学ぶもの」(学校事故の被害者遺族と学校側がともに分かりあえたケース)
  • 参加費:無料

内容

第1部 14:30~15:40
  • 開会のあいさつ(小野田)
  • 南部さおり(日本体育大学准教授、医学博士)「『部活動の安全指導―先生方に心がけて頂きたいこと』(2014年)の提起から5年」
  • 倉田久子(柔道事故で亡くなった総嗣くんの母親)「息子の事故と遺族の思い、そして学校との関わりについて思うこと」
    オブザーバー(棤木(ならき)茂賀・元向陽高校校長)
休憩 15:40~16:00
第2部 16:00~18:00
  • 4人の座談会(南部さおり、倉田久子、棤木茂賀、司会:小野田)「不幸にして起きる学校事故の際の、学校側の適切な対応とはなんだろう」を考える
  • 会場からの質問(17:50まで)※後片付けして終了。

解説

夏休みを前にして、多くの学校では部活動の大会に向けて本格始動するこの時期。教師は部活動顧問として注意を払っていても、時として不幸な事故が起きることがある。しかしその後の不適切な対応によって、被害者側と学校(教師側)が紛争状態になることが多くある。

亡骸を前にして真実を知りたい遺族側は、「なぜ?」「どうして?」と学校に迫らざるをえない。遺族側には防ぎようもないことであり、真相解明できるのは学校側だけだからである。それに対し、どのように向かうことが学校側にはできているのだろうか? 「申し訳ない」という気持ちと、「早く忘れ去りたい」という意識の中で様々な行動をするが、学校側の「逃げようとする」姿勢が目立つと、やがて両者の間に溝ができ、それが亀裂となり紛争状態になることもある。遺族側はその姿勢に、さらに態度を硬化させていく。多くの場合、それは訴訟という形での決着をつけなければならなくなるが、何らかの判決が出たとしても、それ自体が収束と納得ということにはならずにくすぶり続ける。

今回の「半公開学習会」は、逆に最初の段階から被害者側遺族と学校側が、互いに不信感を抱くことにならずに、共に事故と向きあうことのできた関係当事者に来ていただいての学習会である。おそらくこのような内容構成の開催は、過去においても例をみない企画といえる。

小野田は全国の約2万校が定期購読している『内外教育』誌(時事通信社、毎週火・金発行)に毎週連載をしているが、前年の2017年6月30日号で「学校事故で亡くなった子どもの卒業証書」というタイトルの原稿を書き、最後の部分を次のように綴った。

私の母校である名古屋市立向陽高校で、2011年6月15日に柔道部の1年生であった倉田総嗣くんが、乱取りの練習中に他の部員から大外刈りで投げられた際に後頭部を強打し、急性硬膜下血腫の緊急手術を受けたが、約1か月後の7月23日に亡くなった事故がある。この事故については、学校側の誠実な対応と謝罪および名古屋市教委の組織した外部有識者による事故調査委員会の報告(2012年5月11日)の丁寧さにより、遺族側が「不慮の事故であった」と納得され、訴訟は提起されていない。南部さおり(日本体育大学准教授)さんが『部活動の安全指導―先生方に心がけて頂きたいこと―』(インターネット上に全文掲載)に、その経緯を丹念にまとめている。
《学校側、殊に校長や教頭からの「謝罪」の言葉は、事故直後から現在に至るまで、何度も出ていたということです。(中略)校長、教頭、顧問、担任の4人は、総嗣君の容態の一進一退に家族と共に一喜一憂し、「ガンバレ、先生と一緒に学校に戻るんだぞ!」「先生あきらめないよ!」と、意識のない総嗣君に声をかけて励まし続けました。(中略)総嗣君が亡くなった時には、家族と、総嗣君のなきがらに対しても、校長が「三年間学校に通わせてあげられなくて、本当にごめん」と、心からの謝罪の言葉を口にしました。》(54ページ)
その後に向陽高校は、総嗣くんの同級生の卒業式に母親を招待し、証書を授与し、卒業アルバムも手渡している。遺族からは死亡見舞金の一部が学校に寄付され「倉田文庫」も作られている
母親は次のように言う。《学校で子どもを亡くした親は、学校側の対応によってどれだけ救われるかが、本当によく分かりました。(中略)もともと総嗣が本当に入りたくて入った高校だったし、私も、今でもこの学校が好きです。》(55ページ)
卒業証書には割印と卒業者台帳や番号が必要ではないのかという疑問もあろうが、そういう形式論の問題ではない。子を亡くした親が、わが子の通った学校をどのような思いで見ているかに思いをはせ、温もりのある学校運営をしているかどうかが問われているのだ。

登壇いただくのは、上記の南部さおり先生、総嗣くんのお母様の倉田久子さん、そして当時の校長であった棤木茂賀先生である。誠実に学校事故と向き合うということはどういうことかを、皆さんとともに考えたい。

参加申込

2018年6月10日(日)までに、(メールがいいですが、電話もOK)下記まで連絡をお願いします。
miyako@hus.osaka-u.ac.jp(06-6879-8113)

担当:事務補佐・加藤都(月・火・水・金)(※木は休み)

*講義室収容定員の関係上、定員180名になり次第、締め切ります。